刻印の謎

セラミックや陶器を逆さにするとあらわれる刻印。
ここにはいろんな情報がつめこまれているのです。
葉っぱのカップを見てみると、あります。バックスタンプ。
同じ釜のものでも、刻印は年代によって違ったりします。
そこから製造された時期を特定できるのですが、それがまた多種多様。
なかなかむずかしいのです。
このカップはフランス、DIGOIN(ディゴアン)・SARREGUEMINES(サルグミンヌ)のもの。両方とも地名です。
日本でも基本的には、その土地周辺の材料(土)を使って陶器を作れば「○○焼」という名称になるそうで、ヨーロッパのそれもまた同じなのでしょうか。
さてさてここで。このふたつの地名、地理的には大きく離れた場所にあります。
なのになぜひとつの陶器に一緒に記されているのか。
1790年、ドイツとの国境ロレーヌ地方にあるSARREGUEMINESにできた釜は、品質のよい陶器をつくりだし大きな会社へと成長。
このロレーヌという地方は、となりのアルザスと共に、戦争によってフランス領になったりドイツ領になったりと、歴史に翻弄された土地。
1870年-71年の普仏戦争の結果、ドイツ領となったSARREGUEMINES。
フランスへは「輸出」ということになり、税金が課されることとなったのです。
そこでフランス中部ブルゴーニュある、もともと釜を持つDIGOIN(ディゴアン)という町に移動。
そののちに作り出された製品には、両方の釜の名前が入った刻印が押されることとなったのです。(DIGOIN / SARREGUEMINESそれぞれのものもありました)
その後100年近く、さまざまな絵柄のスタンプが押されていました。
はい、ここで葉っぱのカップに戻りましょう。
こちらには文字のみで、絵柄がありません。
1970年代以降、絵柄のマークが使われなくなったとのこと。
なのでおそらく、近年のFANFAREというシリーズのものでしょう。
ほかに、栗のような形の手書きの絵のプレートを見たことがあります。
どんなものでも、ここまできた物語があるのです。
おうちにあるカップ、ひっくり返してみてください。
想像を膨らませて楽しむのも、古道具の醍醐味です。
*葉っぱのカップ


関連記事

過去の記事